太陽と雪
あぁ、もうっ!!

ママったら……

勝手なことばっかり言うんだから。

それを言うならパパもだわ。


主従関係があるのは事実。

だが、恋愛は自由だ、って。

急に伝えてきたりして。

なんか頭痛くなってきたわ。

別の意味で。


「いつまでこの部屋いるつもり?
矢吹。

一旦出てくれるかしら。

通販で買った物、全部着てみるから」


そう言いながら、段ボールから服を取り出す。


「まったくもう。

通販なんて、あまりしないから分からないわ」


普段の買い物は、矢吹と一緒。

矢吹、ああ見えて頭いいみたいで……

覚えてるのよね。

私が泣く泣く手放さざるを得なかった商品の特徴とか、ブランドとか、値段とか全部。


家に帰ったら宅配便でその商品が届いてた、なんてことがざらにあるんですもの。

だから、自分がネットを介して通販なんて、したことないわね。


そんなことを思いながら、着替えていく。

白のフリルが付いたニットワンピに水玉のドットキュロット。

ダイヤが散りばめられたリボンネックレス。

全身で総額12万。

バッグと靴も合わせてね。

これでもまだ、安いほうよ。


恐る恐る、隣の部屋をノックして彼を呼んでみる。


「あ……あの…矢吹?

どう……かしら」


恐らく、熱のせいも相まって、今顔がりんごでは例えられないくらい真っ赤だろう。


だけど。


隣の部屋から出てきた矢吹は、真っ赤な顔を背けつつ言った。


「とてもよくお似合いでございます、彩お嬢様。

世界中の殿方の視線がお嬢様に釘付けになることでしょう。

少々、癪に障りますがね」


コイツ、物言いが素直過ぎるわね。


「お嬢様。

先程も申し上げましたが、少なくとも街中では肌の露出はご遠慮なさいませ。

今の世の中は物騒でございますので。

心配なのでございます。

……彩お嬢様が乱暴されやしないかと。

女性だから、という理由だけでいきなり電車内で刺されたり、いきなりぶつかって来られたりと、様々な事件も起きております。

彩お嬢様を、そのような事件からお守りするために、私がいるのでございますが」

「心配しなくても大丈夫よ。

パパとママの娘なのよ?

警察官と、検事の。
そう簡単には襲われないわよ」

その言葉はただの自惚れで、実際にはか弱い、非力な女性であることに、数日後に気付くなんて。

この時は想像すらしていなかった。


私はそれだけ言うと、部屋に戻った。



< 18 / 267 >

この作品をシェア

pagetop