あやとり

侵入者


振り返るとその男は、私とは逆方向に歩いていった。

その男は顔を右上方に向けたまま、歩いている。

視線の先を追って見ると、そこには優ちゃんの部屋のドアがあった。

電信柱の横で立ち止まっても、男の視線はずっとそこに向いているような気がした。

今度はなんとなく気になって、私はその男のことを見ていた。

ずっと動かず、電信柱の横に立って、一点を見続けている。

なんだか不気味だった。

しばらくして、甲斐君がドアから出てきた。男の体が電信柱にぐっと寄った。


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