魔王と王女の物語

コハクの回想

物心ついた時には、いつもローズマリーと2人だった。


家の周囲は水晶の森で覆われていて、森へ入る時は必ずローズマリーが結界を張ってくれて、

近くの村に出かけるようになったのが…10歳の時。


5歳を過ぎた頃からいつも魔法で何かを作っているローズマリーを手伝い、それは日課となっていた。


「お師匠、森を抜けたら何があるんだ?」


「私たち以外の人と会えるわ。たまには私以外の人とも話したいでしょ?」


葦で編んだ籠を手に提げて、その中には何かの液体が入った小瓶が沢山入っていたた。

ローズマリーは時々それを村に持って行って手ぶらで帰って来て、そして何かを唱えると、瞬きをした後には目の前には様々な食材や雑貨が床に並んでいた。


ローズマリーはいつもコハクの憧れだった。


――10歳のコハクはすでに顔は整っていて背も高く、瞳の色は赤く…

人並み外れた容姿を備えていることに気付くはずもなく、森を抜けてしばらく歩いた先にある小さな村へ入ると、同じ年頃程の男の子や女の子が居て、

ただコハクが近寄ろうとするとそそくさと逃げられ…


「師匠…なんで逃げて行ったんだ?俺…話したいのに」


「あなたが珍しいから見てるのよ。とにかく気にしないことね」


――気にしないこと、と言われても気になる。

ローズマリーが村人と親しげに話をしている隙に離れて、広場でボール遊びをしている活発そうな男の子に声をかけた。


「なあ、一緒に遊ぼうぜ」


「やだよお前の瞳の色、気味が悪いから」


「瞳の色?…赤いのが駄目なのか?」


「お前も魔法使いなのか?何か魔法を使って見せたら仲間に入れてやるよ」


…今の今までローズマリーからは魔法を教えてもらったことはない。

手伝うことはあっても“教えてあげる”とは言ってもらったことがなく、読み書きは教えてもらっても、ねだっても脅しても魔法だけは教えてくれなかった。


「…魔法を使ったら遊んでくれるか?」


「いいぜ」


人との会話に焦がれて、純粋なコハクはとにかく同い年の友達が欲しくて、そして、魔法使いになる決意をした。


ローズマリーを説得しよう。

はじめて強く願った。
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