雨と傘と

幸葉⑤

春にいは、私と朔ちゃんの間に何かがあったと気付いていると思う。それでも、何も言わないところが春にいらしくて、その優しさが痛かった。私たちは、春にいにはきっと嘘は付けない。それを知っているのかもしれない。

いつもと変わらない毎日が、恐かった。

自分の気持ちがふいに、恐かった。

ちょっとしたきっかけで、崩壊してしまうんじゃないかと思う。それほど、私の心は脆くて弱かったんだ。


「しばらく、クラス委員の仕事があって、昼休み行けないんだ。」


そう申し訳なさそうに言う春にいに、頷く。
それは、本当ではないかもしれない。

ただの勘だけど…

教室に来たくないのかもしれない。私と朔ちゃんの空間に。でも、春にいは気持ちを隠すのが上手すぎて、私には分からない。彼は普段の喜怒哀楽の表現は大きいけど、その奥にある本当の気持ちを読み取るのは難しい。周りを自分のペースに巻き込むくせに、人一倍周りのことを気にかけているような人だ。

そして、何より、私と朔ちゃんを大切にしている。

けど、春にいだって、中学二年生の男の子だから。
私が朔ちゃんのことも好きだってことに、苦しんでることは間違いないと思う。傷ついているに違いなくて。


それでも、私は気持ちを想いを、止めることはできないから。


彼は、目を逸らしてくれてるんだ。

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