初恋の実らせ方
初恋は油断大敵
パンッ。
弓道場に乾いた音が響く。


「また皆中…」


放課後、彩は黙々と弓を引く啓吾を見ながらぽつりとつぶやいた。


さっきから啓吾の射る矢は的に命中しっぱなし。


それが気になって、彩はほとんど練習に身が入らない。


とは言え。
袴を穿けるのが格好良いからとか、啓吾に誘われたからといういい加減な理由で入部した弓道部。


運動神経の残念な彩は、まだゴムの弓で練習する段階なので、集中力散漫なのはいつものことだった。


規定の練習時間は過ぎていたため、道場に残ってるのは練習熱心な啓吾と、昨日の言い合いに決着をつけたい彩の二人きり。


「どした?」


啓吾は的前から退出すると、彩の顔を覗き込んだ。
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