繋いだ手
一休み
 「お待たせ!」



約束の時間にまた10分遅れてしまったことを、



肩を窪ませ、大きく目を見開いた、あたしが、



お馴染みの表情でごまかして見せた。



「もう、慣れっこです!」


わざと、声だけを無表情にしたあと、正面の顔が笑った。



最近の週末は善(ぜん)と過ごす事が多い。




気が付けば、最近のあたしは、よく、この人と一緒にいる。



善はあたしの事を



「理央〈りお〉さんは楽しい!を見つけだす天才★だ」



と言っている。



近ごろはあたしの都合も聞かずに、善から、



次の計画が発表される。




そして、あたしは、そんな善の手招きを、


とっても楽しんでいる。



「今日は何処行きたいっ?」


ねじられた毛先を、上下左右に遊ばせて



ワックスで完璧にセットされた



やわらかいキャラメル色の髪



その毛先辺りから聞こえてくるような、語尾の上がった声が、



これから始まる空間に、



とっておきの楽しい!



が訪れる事を予感させる。


 今月に入って何回目だろうか…  



あたしの仕事のサイクルを、いつのまにか把握している善。



そしてそのペースに自然に溶け込み、



OFFはこの人といるあたし。



あたしと善の関係は



上司と部下だ。
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