繋いだ手
海にいた。
町外れにある海。



目的の美味いラーメンは、あいにくの定休日で、食べ損なってしまった。


でも、距離のあるドライブは、それを気にも止めないくらい、今ある気持ちを満たしてくれた。




善と、二人で、この海に来たのは、今日で2回目。



窓の外が、見慣れた景色になり、ホッとすると




「また、あの海にいこう」

と、どちらともなく言い出して、

6月の海風が、まだ、冷たいのも、

予想できたけれど、


前に、ここへ来た時、


波の音に癒されて、

優しい気持ちになれた事が

脳裏に焼き付いていて
二人をまた、


行きたい気持ちにさせた。




松の木が生い茂る、暗い小道を、恐る恐る通り抜けると、海岸が見える。


時間は夜9時を回っていた。


さっきの小雨で足元はドロドロ。


ほとんど光も射さない。


あたしは、本当は、

怖がりだ。


たぶん、男同士で来てても
薄気味悪くて

寄り添ってないと

通れないくらい、


海岸に着くまでは、かなりサバイバルな感じだ。
           

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