繋いだ手
喧嘩をしていた訳ではないけれど、

仲直りした、善とあたしは、

どちらともなく、並んで、一等地の方に歩いた。


ジャングルジムのような鉄の囲いは、長い間放置され、錆付いている。


錆臭い鉄の棒を、善が先に行った。


思ったより、棒と棒の間隔が広い。


「理央さんには、登れないかもよ、あぶない。」



「大丈夫、登りたい!」


「気を付けなよ!」

あたしは一回、頭をコクンさせた。



あたしは、その上から見える景色に、わくわくして、

余計なくらい、自分に気合いを入れた。



普通のジャングルジムの2倍はある、錆の棒と棒の間隔。


上へ、一つずつ、踏み外さないように。


あと一つで天辺という時、


先に登った善が、

あたしの右手を繋いでくれる手を差し出した。



『え?』


変な間があたしの中で一瞬通りすぎる。


今まで善と一緒にいても、感じた事のなかった、


胸が縮まるような気持ち。

あたしは、

あたし自身が想像もしていなかった自分の気持ちに


驚いた。


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