さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
どこでどう間違えて現代へのイメージが定着してしまったのか。





「一体日本の未来はどうなるのだ?」




あの日以来何度も聞かれたこの尋問。




「良い世の中になるよ。甲子太郎の望む通りに。」




甲子太郎は武力・暴力を決して好んではいない。




勿論、撃剣を長じてはいたけれど上京前・新選組・御陵衛士時代を通じて数えても、人を斬ったのは暗殺者への反撃の一太刀だけだったと言われていた。




甲子太郎は最終的に武力倒幕ではなく、公議を基本とする王政復古を目指していた。




現代は甲子太郎が望んだ世界の完成形と言ってもいいだろう。




「それは良かった。」




甲子太郎は嬉しそうに目を細める。





俺を拾ってくれたときも同じ笑顔だった。




通りすがりの甲子太郎は、行き倒れていた見るからに怪しい俺に微笑んでくれた。



< 68 / 308 >

この作品をシェア

pagetop