――四天王家に生まれたことは、弓月にとって誇りであった。

それも、可能なら男として生まれて来たかった。

どれほど腕が立っても、鍛錬を積んでも、女の非力さは補えない。男でさえあったなら、家族を……『青龍』を守れたかも知れない。


長い黒髪を一つに結い、成人前の若武者風の装いで乙矢の前に立つ娘。遊馬弓月(あすまゆづき)は十七歳、二千石相当の旗本の娘であるから、姫君である。


『護国の四神剣』を守る四天王家の一角、遊馬家に生まれた。神職に近い家柄と多くの者が理解していた。

父、遊馬渡は、二刀流を秘伝とする剣術、遊馬流の二十二代宗主。

母は物心つく前に亡くなった。

優しい父と五歳上の兄・満(みつる)に守られて、真っ直ぐな心を持つ、可憐な少女に成長した。


そして、女ではあったが兄同様に剣術を習い、並みの男ではとても敵わぬほどの腕前となる。


「父上! 弓月は、強い殿方でなければ、嫁には参りません」


十になる前からそんなことを言っていた。しかし、そんな娘に、父は笑いながら答えたものだ。


「なら心配は要らぬ。そなたの許婚は神童と名高い爾志家の一矢殿だ。白虎の主やも知れぬぞ」
 


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