恋愛の条件
9.それぞれの想い
エレベーターの中で奈央は憂鬱だった。

案の定、昨日は殆ど寝ることができず、答えの見つからない迷路に彷徨いこんだようにぐるぐると同じことを考えていた。

はぁ、と大きく溜息をつき、修一と片桐、今日も二人と顔を合わせなければならないと思うと、奈央の足取も重くなった。

エレベーターの鏡を見て、更に溜息。

睡眠不足のためか、化粧のノリが悪い。

髪は完璧に巻いてきたが、どうしても目の下の隈が気になる。

ふと指先に視線を落とせば、それは更に奈央の気分を悪くした。

お気に入りのラメフレンチのネイルが割れ、ジェルが剥がれかかっていた。


(最悪!!サロンでしてもらって一週間も経ってないのに!!)


気鬱だった奈央の気分が、一気にイライラに変わった。

確かチップがデスクにあったはず、とオフィスへと急いだ。

オフィスのドアを勢いよく開け、奈央は小走りに自分のデスクへと向う。

「あっ、やっぱりあった!」

引き出しからネイルチップケースを取り出し、ホッと安堵の溜息をついたとき、背後からよく知る低い声が降ってきた。

「何があったんだ?」

突然の声に、奈央は手に取ったネイルチップを落としてしまう。

「何慌ててんの?」

「修……こん、な早くに何してんの?」

動揺で奈央の声が細くなる。


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