ハレゾラ
あなたを知りたい

食事の用意が整った頃には、私の気持ちも落ち着いてきていた。
まったく……。今日は何回赤くなればいいのだろう。
少々憤慨しながらも、目の前に広がる光景に心を奪われてしまう。


「どうぞ、ごゆっくりお召し上がり下さい。また何品か温かい物はそのつど
 お運び致しますね」


そう言って、女将さんは部屋をあとにした。


「さすが海が近いだけあって、すごく豪華だよね。この舟盛りなんて最高っ!」


年甲斐もなく興奮しまくりだ。お酒を飲むのは大好きだけど、それはやっぱり
美味しい食べ物があっての事。
こんな料理、近所の食事処や居酒屋では、なかなかお目にかかれないだろう。

目をキラキラさせながら「この食材は何だろう?」とか「この魚、まだピク
ピクしてる!」と1人でウキウキしたいたら、彼がクスっと笑った。


「咲さん、そろそろ食べない? お腹すいちゃったよ」


「あっごめん。こんなの久しぶりで興奮しちゃって……。うん、食べよう。
 いただきますっ!」


「咲さんらしいね。いただきます」


二人微笑みながら、食事をはじめた。
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