シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・到来 櫂Side

 櫂Side
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次第に大きくなるヘリの音は、単数のものではなかった。


機械室には窓がないから、外界の様子は窺い知ることは出来ないが、これから中継準備が着々と成されていくのだろう。


「中継用か?…久涅はスクリーンを3つ設置すると言ってたのに、随分ヘリが来てるな。空からでも中継するつもりか? どれだけ広げて中継するつもりなんだよ」


司狼と旭は、遠坂司令官の命令下、久涅の攻撃対象になりえそうな資料を片付けている。


久涅が此処にきた時、感づかれなかったろうか。


書物が開いていても、多くはルーン文字で書かれたレグの手記だから…そう簡単には内容は判らないはずだと思いたい。


俺は、遠坂曰く…外風でもカツラが吹き飛ばされぬよう、俺の地毛とカツラとを一緒にして、サイドを編みこまれている…らしい。


更にぱたぱたと化粧をされている。


俺の意見などない。

物を申す言葉も出ない。


――ちゃあああん!!


昔々、芹霞の母親から、目の前の芹霞にせがまれるまま…化粧をされた記憶が蘇る。


――櫂、何てかわいいのッッ!!!

――リボンとスカートが似合う!!

――お母さん、妹にしていい!!?

――櫂、ずっと女の子でいて?


俺はあの頃の姿を消し去り――

正反対の姿になったんだ。


――櫂は本当に、あたしの可愛いお姫様だね。


"ぎゅう"と"ちゅう"で喜びを現す芹霞と、ひらひらの服を着て笑顔で外を歩いた…あの頃の俺じゃない。


今の俺は――

断じて女装なんて似合う男じゃない!!!


そう思えど。


何で皆、笑いださないのか。

何故久涅すら迷ったのか。


そして、この姿にて――

俺の無様な姿は全国放映される。


屈辱。

最悪。

ここまで落ちぶれるとは…情けなすぎる。


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