シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・惨状 玲Side

 玲Side
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望んだのは僕。

決断したのは僕。




――"約束の地(カナン)"に、行こう。



それが僕の破滅への序章と知りながら、

それでも僕は…見ぬ振りは出来なかった。


氷皇の警告だけではなく…

実際に"約束の地(カナン)"は危険に陥っていると判ってしまったのに…僕はその中に居る櫂を見捨てることは出来なかった。


――玲。俺はお前を見捨てない。


過去、何度も何度も、櫂は僕を救い続けてくれていた。


櫂が僕を生かし続けてくれていた。


それなのに僕は、櫂が溺愛する芹霞の中から、櫂への想いだけではなく…存在そのものを消し去り、櫂がいない隙に芹霞を自分のものにしようとしていて。


罪悪感よりも、切羽詰まった愛情だけを優先しようとして。


それを強行しようとしていたのは事実。

卑怯すぎる僕を認識していたのも事実。


それでも僕は芹霞が欲しかったんだ。


僕は結婚したくなかった。

子供なんて作りたくなかった。


僕の心に偽る、暗い未来を…選びたくなかった。



だけど…

だけど!!!


僕は…櫂の命を消したくはないんだ。

あの久遠が声を上げる程の危機的状況にあるのを、見過ごせなかった。


櫂の窮地には、僕が助けないといけなかった。

それは…僕の心の誓いだったから。


何があろうとも、僕は櫂を死なせてはいけないんだ。


だからこそ、僕は…


――約束、して欲しいんだ。


最後まで、反対していたんだ。


櫂を…挑発してでも。


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