身代わり王女に花嫁教育、始めます!
そうなれば、側近らが次に考えるのは、当然のごとく王の世継ぎ問題――。


「バスィールを足がかりに、東の大国に攻め入ろうという魂胆であろう」

「違います。いえ……そういった声があるのは確かです。緑豊かな大地は我ら砂漠の民にとって、永遠の憧れですから」


サクルにしてもそういった思いがない訳ではない。

だがそれ以上に、彼は砂漠を好んだ。


「なら、バスィールの王女でなくともよかろう。そのうち、適当な女を孕まそう。息子が生まれるまで、そう時間はかかるまい」

「でしたら、少しはハーレムにお泊まりください。国中の美女を集めておりますのに、女どもが無駄に歳を取っていきます」


サクルは一瞬ムッとしたが、


「ならばお前にも二、三人くれてやる。きれいな花が揃っておるぞ。枯れぬうちに、存分に愛でてやれ」


アリーをからかううちに、だいぶ気分がよくなった。

彼はサクルより八歳も年長だ。整った目鼻立ちがよく似ており、替え玉を務めることもままあった。クアルン王の年齢不詳という噂はその辺から出たものだろう。

そして今回も――


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