恋猫
三の章 江戸随一の美女

 六ヵ月後。


 淳ノ介も、美化も、江戸の町も、嫌な事はすっかり記憶の彼方へ追いやり、それに変わって、元禄時代のうきうきする華やかな時が訪れていた。


 美化は六ヶ月間、欲望を凍結していたが、そろそろほとぼりも冷めた時機が来たと、頃合を計っていた。


 「そろそろ行動する時が来た。本当に長かったよ」


 美化の目がぴかっと輝き煌いた。


 「淳ノ介さまの心の痛みも、少しは癒えただろうよ」


 「次の恋の相手が、そろそろ現れてもいい頃だ」


 「よ~し、ここら一丁探してみるか。篠さまを上回るとびきりの美人を。きっと、きっと、探してみせますぜ」


 そう心に決めると、美化はとびきりの美人を探しに町の中に出掛ける事にした。




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