超能力者は暇ではない
◇小高と関根
ボーイに呼ばれてやってきた二人のキャバ嬢・夏季レミと月更ユウカは、京たち三人を見るなりキャーキャーと騒いだ。
「お兄さん超イケメン〜!ほんとにレミでいいのぉ?」
夏季レミが、京の腕をがっしり掴んで寄りかかってくる。
「うん、話聞くだけだし」
京が素っ気なく対応する。
「え〜!もっとたくさんお話しようよぉ〜」
レミの手が京の首筋に触れる。
その瞬間、リオがレミの頭をわしづかみにして彼女の腹部を殴った。
突然の出来事に唖然とする客と店員。
レミは物凄い形相で立ち上がると、「何すんのよおおお!!」とリオに掴みかかった。
「何すんのよじゃねーよ!てめぇ誰の男に触ってんじゃあ!!」
いきなり野太い声で叫び出したリオを、京が酒のボトルで殴る。
「痛っ!何すんですか京様ぁ!!」
「何すんですかじゃねーよゴルァァァ!!おまえは俺の仕事を潰す気か!?あ!?」
いきなり始まった京とリオの取っ組み合いを、久保が華麗に止める。
「はいはい落ち着いて落ち着いて!今オレたちがするべきなのは、喧嘩じゃなくて捜査でしょ!」
久保の腕に絡みついていたユウカも、驚いたような表情で二人を見ている。
二人はしぶしぶソファに座ると、なんとなく嫌な雰囲気のまま質問を始めた。
「まず、小高との出会いと印象を聞かせてもらえるか?」
京の質問に、レミとユウカが顔を見合わせる。
最初に口を開いたのはレミだった。
「初めて小高が来たのは、あたしがキャバ始めて一ヶ月くらい経った頃だったかなぁ。なんか、関根っていうオッサンにおすすめされて来たとか言ってた〜」
「関根?」
リオが尋ねると、少しだけ嫌そうな顔で頷くレミ。
先程の出来事を未だに引きずっているようだ。
「関根は、あたしらの先輩をいっつも指名してたハゲ面のオッサン。あたしは話したことないし、あんま会ったこともないんだけどねえ」
レミの言葉を一字一句間違いなくメモしていく久保。
どうやら久保は、相手の話している事は全てメモを取らないと気が済まないタイプの人間らしい。
「でも、その関根って人は途中から来なくなった。多分他のお店でお気に入りができたんだと思う。小高サンは結構長く来てたけど、最近は来なくなったなぁ〜」
「最近って、いつ頃から?」
「ここ一年は全っ然来てない。どうせ他のお店で別のコに乗りかえただけだと思うけどォ」