青い星〜Blue Star〜






「まいったな。入隊する前からこんな人気じゃ俺たちも認めざるを得ないじゃないか。なぁ、トシ。」



「そうだな。」




奏は顔を上げて二人を見つめた。
優しく微笑む二人に奏の涙はとうとう決壊した。

一度流れたらもう止まらない。

次々と溢れてくる涙に奏は唇を噛みしめた。




「うわ!ちょっと認められたのに泣くのはおかしいでしょうに。」



総司は袖口で奏の目元を拭う。




「ちょっと水飲み過ぎて胃に吸収されなかったのが目から出てきただけです。泣いてません。」




あくまで泣いていないと言い張る奏に総司は「はいはい。」と受け流しながら、子供をあやすように奏の頭を撫でた。




「ヒュー、ヒュー!いいぞ!総司!」



「もっと近う寄れ!」



「肩を引き寄せろ!」




周りの悪ノリに総司も天然なのか「成程!」と奏を抱き締めた。




「いや、真面目か!」




奏の叫びはまた連中の笑いを誘うことになった。









文久三年。

歴史が一つ変わった。

女人禁制の新選組の前身、壬生浪士組に未来から来た女剣士が誕生した。


これが、これから壬生浪士組に起こる悲劇に吉と出るか、凶と出るか、まだ誰にも判らなかった。


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