青い星〜Blue Star〜




「私からもお願いします。」




奏と並んで総司も頭を下げた。

奏はたかが女の為にあの沖田総司に頭を下げさせるなんて、ひどく申し訳なく思った。


だが、奏自身もここで引き下がれない。

大好きな壬生浪士組を、未来の新選組をより身近にこの目におさめておきたかった。

何より只でさえ戦う彼らのお荷物になるのに女中なんて武術家としての奏のプライドが許さなかった。


「彼女は腕も立つし、壬生浪士組を思う気持ちにも感服致しました。」




それに、と総司は続ける。




「奏さんを拾ったのは私です。生き物を拾ったら最後まで面倒見なくてはならないと教えてくださったのは先生方ではありませんか。」




私はペットか!

とツッコみたい気持ちでいっぱいだったが、この状況でそんな無礼な振る舞いをするわけにいかず、ぐっと耐える。




「先生方!私も彼女に隊士として入隊してほしいです!」




そう言ったのは先程奏に突っかかった若い隊士だ。




「彼女が師範をすれば、もっと壬生浪士組は強くなれると思います。それに壬生浪士組への思いを語る彼女の瞳には嘘偽りありませんでした!それに、それに、彼女は美人だから隊の士気も上がると思います!」




若い隊士の言葉に皆吹き出した。



「違いねぇ!」



「いいぞ!佐々木!その通りだ!」



「別嬪肴に酒飲むのも粋じゃねぇか!」



「さっきの仕合見て嬢ちゃんを手籠にしようなんていう勇者はいねぇだろ!きっと息子のお亡くなりが先だぜ!」




一気に騒がしくなった道場。


奏は不覚にも泣きそうになった。
なんて温かい人たちなんだろう。

奏は初めて自分の心が不安に押し潰されそうになっていたのを知った。


無理もない。

いきなりタイムスリップして右も左も判らないような時代で知り合いが誰一人いない。


それを心細く思わない人間なんていないだろう。


だからこそ隊士たちの温かい言葉は奏の心にじんわりと広がった。



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