朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
第十二話 柚と暁
柚は女物の服に着替え、身支度を整えて部屋で一人暁を待っている間、貴次に言われたことを思い出していた。


(稚夜と一緒に稽古か。

それは面白そうだと思うけど、なんか貴次の距離感が気になるんだよな。

あんなに顔を近付けなくても聞こえるっつーの)


 あの時の貴次の様子を思い出すと、柚はなんだかもやもやしてしまうのだった。


柚を誘惑するように見つめるあの瞳が頭から離れない。


(それに興味が湧いたってなんだよ。人をおかしな物みたいに言いやがって)


 柚はやっぱり冷たい印象のする貴次のことが好きになれなくて、でもなんだか無性に気になって、胸のもやもやが消えずに苛立っていた。


 そんなことを考えているうちに、暁が部屋にやってきた。


「柚っ!」


 嬉しそうに部屋に入ってくる暁を見て、柚はほっと安堵した。


胸のもやもやも、暁の顔を見たら吹き飛んだ。
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