朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
入ってくるやいなや、暁は柚を抱きしめた。


会えなかった寂しさを埋めるように柚の香りを堪能する。


抱きしめられても、柚は抵抗しなかったし、特になんとも思わなかった。


外国人のハグみたいなものだと思っていた。


嬉しそうに抱きしめていた暁であったが、身体を離して柚の身体を改めてみると、眉間に皺が寄った。


羽織っていた青藤色の長衣を脱ぎ、柚に着させる。


「なんだよ、別に寒くねぇよ」


「いいから着るのだ。最近どんどんしどけない格好になってきて、余の目に毒だ」


「目に毒ってなんだよ、失礼だな」


 そう言いながらも、柚は大人しく長衣を着た。


暁が羽織ると膝下までの丈の長さだが、柚が着ると踝くらいの丈になった。


暁は大きいんだなあと思うと、なんだか胸がくすぐったくなった。


長衣から暁の香りがほんのりするのも、少しだけ嬉しい。
< 109 / 342 >

この作品をシェア

pagetop