紫水晶の森のメイミールアン

第3話 最下位の側妃となったあの日の回想録

「今日から部屋を移って頂きます。それから侍女は全て解任通知が出され……」

 祖国リリカルド王国が滅亡との悲報が届き、悲しんでいる間もなく、後宮を取り仕切る女官長から、無表情な顔でいとも簡単な事のように、残酷な事を淡々と伝えられた。祖国を失い何の後ろ盾も寄りどころも無くし、何の価値も無くなって、孤児のようになってしまった身では拒否は出来ない。

 正妃の件は白紙となり、王女の称号も取り下げられ、今日から西の外れの石作りの建物に移る事、侍女は全て解任、暇を出され、自分の身の回りは全て自分でやらなくてはならない事、その他諸々…。

 あの王宮内の西の外れの石の家に初めて連れて行かれた日の心細さは、生涯忘れられないだろう。

 持ち物は木の衣装箱3棹だけ持って行って良いとの事で、慌てて輿入れの時に持ち運んだ私物を厳選し、幼いながら価値のありそうな物や衣類や必要になりそうな物などを一生懸命選んで出来るだけ大きな箱に沢山詰め込んだ。

 豪華で美しい彫刻の衣装箱は人足によって石の家の前の庭に置かれると、案内の女官と共に、なにも告げずにサッサと帰って行った。
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