隣の彼の恋愛事情
ロッカーで、普段からほとんどしていない化粧をこれまた適当に直して、待たせていた早希に、仕事が終わったことをメールする。

『正面玄関集合ね』と即レス。
(こういうときは返事早いんだよね~)

これ以上早希を待たせないように急いで正面玄関に向かう。

「お待たせ~」
小走りで近づくと、先の気合の入ったナチュラルメイクに見える作りこんだメイクに今日のコンパへの意気込みを感じて苦笑する。

(戦闘態勢ばっちりね)

(早希の大きなチワワの目で見つめられたら男の人もその気になっちゃうよね~。)

なんて思ってたら、さっそくのダメだしタイムが始まった。

「紅の服地味~」
上から下へまさに値踏みをするように見られる。

「しょうがないでしょ。急に早希が誘うから。」
地味といっても、棒タイブラウスにノーカラーのジャケット。スカートはミント色のシフォンスカート。靴だってちゃんと7センチのパンプスを履いている。
これは新人研修のときに教官に「会社の外でもお客様に見られています。わが社の社員として恥ずかしくない服装を」と言われていたから。

こういうときぐらいはあの鬼教官に感謝しなくちゃね。
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