隣の彼の恋愛事情
「そうですね。今年はなんだか花見をする余裕もなかったです。」
(誰かさんの下僕になったせいでね)

胸のなかで悪態をつく。

「でも、この青々とした葉っぱも俺結構好きなんだよね。」
いつになく穏やかな目で桜の木を見ながら言った。

「確かに、青々とした葉っぱを見てると、花が満開のときより生命力を感じます。」
そう言った私の顔を見て、少し驚いた顔を見せた。

「お前みたいなミーハーな奴は、満開の桜にしか興味がないと思ってた。」
「ミーハーって。でも三浦さんも同じように旬じゃない桜の木が好きって聞いてうれしかったです。華やかな世界の人は華やかなものを好むのかと思ってたのに。」

「・・・華やかな世界ね。」
そういったアイツは、桜の木を見つめながらさみしそうにつぶやいた。
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