隣の彼の恋愛事情
「お前いったいどうしたんだよ?なんか熱くなってない?」

「別に、おいチンチクリン帰るぞ!」

そう言って、私の鞄を掴むと座席をたち、出口にすたすたと歩いていった。

「み、三浦さん、ちょっと待ってください!」

アイツの思いもよらない行動に、私はあとについていくだけで精一杯だった。

長い脚で前をスタスタ歩くアイツに追いつくために、小走りで追いかける。

(ん、もう!歩くの速いよー!)

すると急にアイツが歩く速度を緩めたので、思わず背中にぶつかってしまった。

「ぶっ!」

アイツの背中に見事ぶつかって、低い鼻が赤くなった。

「もう、急に止まらないでください。それとバックかえしてくださいっ!」

そう言った私を受けから、ちらっと見てまた歩き始めた。今度はゆっくりと。

「いつの間にか桜終わっちゃったな。」

すっかり葉っぱだけになった桜の木を眺めながらアイツが言った。
< 50 / 335 >

この作品をシェア

pagetop