【単連】MEETs JUNCTION(BL含)
罪に堕ちていく

『わたしの育て方が悪かったのかしら……』



 瞼を閉じて思い浮かぶのは、両手で顔を覆う母親の姿だった。












「イクミ、起きろ」
「ん……。ぁ、」


 声の主であるカイシュウの名前を呼ぼうとして、思ったように声が出ない事に気がついた。


「仕事行くから」


 少ない言葉の中に、『帰れ』という意味を汲み上げる。


「無理。俺動けないし」


 唸るように喉から絞り出した声に、着替えをしていた快修が不機嫌そうにこちらを見た。


「テメェのせいだろ。動けねぇもんは動けねぇんだよ」


 わざとらしく舌打ちがなった。


「朝までには出ろよ。イクミだって学校あんだろ」
「めんどくせぇ」
「約束出来ないなら今引っ張り出すぞ」
「うるせぇな。わかってるよ」


 恋人である俺が見送るでもなく、カイシュウは家を出て仕事場に向かった。

 午後4時。

 彼はホストだった。







< 11 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop