鬼姫の願い
鬼姫の願い
"義姫様は夜深くになるとよくこちらにおいでになられるのです。いつも、若様の身を案じてあのように語りかけられています"
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「──────義!」
女中の話を聞いた輝宗は、屋敷へ帰ろうとする義姫を庭の半ばで呼び止めた。
闇に響く輝宗の声でぴたりとその歩みを止める義姫。
しかし彼女が振り返ることはない。
「義…ここに通っていたのか…?」
そんな後ろ姿に確かめるように問い掛けるが、義姫は何も言わずただその場に立ち尽くす。
その背中が、輝宗には肯定の返事に見えた。