鬼姫の願い
鬼姫の願い





"義姫様は夜深くになるとよくこちらにおいでになられるのです。いつも、若様の身を案じてあのように語りかけられています"




──────────────────

────────

─────…




「──────義!」




女中の話を聞いた輝宗は、屋敷へ帰ろうとする義姫を庭の半ばで呼び止めた。


闇に響く輝宗の声でぴたりとその歩みを止める義姫。

しかし彼女が振り返ることはない。




「義…ここに通っていたのか…?」




そんな後ろ姿に確かめるように問い掛けるが、義姫は何も言わずただその場に立ち尽くす。

その背中が、輝宗には肯定の返事に見えた。





< 18 / 24 >

この作品をシェア

pagetop