夜桜と朧月
……それは……


「私、だったら許せる、かな……?」



髪の毛を撫でる指の気持ち良さに流されそうになるのを理性で防ぐ。



流されてる?



どうなんだろう?



私はお義兄さんの『男性的』な気持ちには、敢えて踏みいっては行かなかった。


妻を亡くした悲しみはまだ癒えないだろうと思っていたから。


でも、実際は、私はお義兄さんの事をどう思っているのか、自分でもよく分からない。


それなのに。



「んっ…んん…」



キスしていいって言ってないのに!

しかもがっつり深い濃厚なキスを!


知らない間に、体を密着させるように抱き締められ、お義兄さんの膝が私の足を割って入り込んでいる。



「やっ……ん!お義兄さん……!」



ようやく離して貰えたと思ったら、そのままぎゅうぎゅうと隙間がないぐらい抱き締められた。

「お義兄さんじゃなくて、名前で呼んで?薫…って」



名前でお義兄さんを呼んでしまえば、もう戻れなくなりそうで。


それがとても恐かった。

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