後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
護衛侍女はブスメイクなんですね!
 熊に見守られながら、お菓子を食べるというのは落ち着かない。出された香りの高い茶も、アイラにとっては単なる湯と大差なかった。

 救いはアイラとイヴェリンが話している間にゴンゾルフが大半の菓子を片づけてしまっていたことで――クッキーを二枚かじったところで皿は空になった。
 それからイヴェリンは、アイラの前に侍女の着るお仕着せを差し出した。

 カフェで着ていたのとは似ているが、こちらの方が露出は少ない。カフェのブラウスは黒かったが、こちらは白。袖がふんわりと膨らんでいる。

 黒いスカートはくるぶしまでで、動きやすそうな黒い靴が一緒に支給された。髪は首の後ろできっちりとまとめて白い帽子を被る。

「そこの衝立の陰で着替えてこい」

 言われるままに、アイラは衝立の陰で家から着てきた服と侍女のお仕着せを着替える。着てきた服は、鞄につめこんだ。

「――それと、これ」

 出てきたところでアイラに手渡されたのは眼鏡だった。イヴェリンがかけているのとは違って、フレームが太い。

「前髪はもう少しおろしておけ。顔があまり見えないように――あと化粧は野暮ったく。不細工に見えればなおいい」
「……化粧、したことないです」

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