あなたのギャップにやられています
第2章

ふたつの顔を持つ男


また慌ただしい日常がかえってきた。


なんとなく引っ越し準備の整った部屋をあとにして、ふたりで会社に向かう。
秘密にしておくと決めた私たちだけれど、雅斗は気にすることなく、私の手を引っ張ってデザイン部のドアを開けようとする。


「大丈夫。俺たちがそうなっているなんて、誰も気がつかないさ」


それもそうだ。
こんなに長く一緒にタッグを組んできたのに、そんな素振り、なかったのだから。

さすがに部屋に入ったときは、私の手を離したけれど。


「おはようございます」

「おはよ」


いつものように挨拶を返してくれる先輩も、私たちのことなんて眼中にない。

< 163 / 672 >

この作品をシェア

pagetop