ロング・ディスタンス
告白

 成美は何を言っていいかわからなかった。頭が混乱した。
 栞が妊娠した子どもを産まずに中絶したということは、彼女は誰かと付き合っていたということではないか。彼女はそれをずっと隠していたのだ。
 もしも交際相手が経済的に少々不安定な立場にあったとしても、大抵の男なら責任を取って結婚しようとするはずだ。いわゆる「できちゃった結婚」というやつだ。そういう選択をせずにお腹の子を堕胎したということは、相手の男はよほど無責任な男だったのか、それともワケありの関係だったのか。いずれにしても嫌な話である。

「あんたは子どもを妊娠して、その子を下ろしていたのね」
 成美がたずねる。
「うん、そう」
 震える声で栞が言う。
「子どもは産めなかったのね」
「産めなかったんじゃなくて産まなかったのよ。本当は産みたかった。でも彼がダメだって……」
「何で彼氏はダメだって言ってったの?」
 彼氏の存在なんて今聞かされたばかりだが、とりあえず話の調子を合わせるために、友人に彼氏がいたことの驚きを隠して話した。
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