雪の涙

蒼龍と親父…それと…

†尚凛視点†

「只今帰りました」

「兄上!!お帰りなさい!!」

「お帰りなさい!!」

次期組長と決まると、組員の態度が、がらりと変わる。

俺はそんな西國組が嫌いだった。

人を優劣で決め、劣を仲間ハズレにする。

結束力も何も無い。

葛城組とは正反対だった。

だけど、この道を行くと決めた時決意した。

西國組の結束力を強め、優劣で組員を仲間ハズレにする事を止めさせる!!

それが出来るのも組長になってからだ。

その間は父の教えに従おう。

組長になったら西國組を変える。

例えどんな犠牲を出そうとも、必ず成し遂げてみせる!!!

「親父。戻ったよ」

「…尚凛か…。…なぁ、どうして晃は出て行ったんだと思う?…厳しくし過ぎたのかな?なぁ、尚凛。晃を…晃を説得してくれないか!?もう一度話したいんだ!!!」

親父が珍しく酒臭い。

酔った勢いで愚痴を言っているのか…。

「親父…。!?これどうしたんだよ?」

部屋の片隅に木材を持ちやすいように細工したのがあった。

「前は無かったよな?親父…!!」

その木材の下の方は血がたっぷりと付いていた。

「…これで、誰を殴ったんだ!!?」

俺が叫ぶと…

「すまない……許してくれ…」

と、繰り返した。


俺が出て行ったのは晃が組長になるのが決まってからだ。

その時には木材なんて無かった。

そういえば、晃から一回だけ電話が来た。

確か内容は…

『兄貴!!助けてくれ!!もう組長なんかになりたくない!!兄貴に譲るから助けてくれ!!このままじゃあ、殺されちまう!!』

この時は留守番で、吹雪に事情を聞いても知らないと言われてたし、簡単に組長の座を捨ててしまう晃が許せなくて、無視してしまったが、いま思うと凄い内容だ。

「…まさか…!!」

俺は部屋を飛び出した。

「吹雪!!これに見覚えは!!」

木材を吹雪に見せた。

「…口止めされてるの」

この一言で俺の考えが固まった。

「やっぱりか…。くそっ!!」

家を飛び出し、交番に向かった。

すると、ボロボロになった晃が居た。
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