狼系王子とナイショの社内恋愛
◇「理由が知りたいですか?」



「何か俺に話があるんですか?」

聞かれて恐る恐る振り返ると、そこには当たり前だけど結城さんがいて。
壁に背中を預けながら挑発するように聞く結城さんを見た後、目を逸らした。

「ありません」
「じゃあ、今週に入ってから俺を避けてた理由だけ教えてもらえませんか」

確かに避けていたけど、それを結城さんが気づいているとは思わなかったから驚く。
あからさまだったはだったけど、結城さんはそういうのあまり気にしなそうなのに……。

「私は、結城さんみたいに強靭な心臓の持ち主じゃないからです」
「俺も強靭ってわけじゃないですよ」
「絶対強靭ですよ。
……あんな事して、普通にランチ相席してくるなんて。
心臓、合金でできてるんじゃないですか」

私が言いきるや否や。
エレベーター内の蛍光灯が消えて、小さな衝撃を感じた。
音にすれば、ガコンって感じの、よく漫画とかドラマでエレベーターが止まる時みたいなそんな音が……。

あれ、もしかして……。
嫌な予感に顔をしかめた時、非常用のオレンジ色のうす暗い照明がエレベーター内を照らす。


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