その一枚がくれたのは、勇気と恋でした
溢れる想い
「本当にいいの？」


いつからだろう・・・



自分の気持ちを素直に表現することが怖くなったのは。

それは、そのことで築き上げてきた関係が壊れてしまうという恐怖だった。



いつからだろう・・・



壊れてしまうのならば、最初から築き上げなければいいと思うようになってしまったのは。


「うん。

私なんかが舞台に立ったら、きっとみんなに迷惑をかけるから」


ゆっくりと立ち上がり、ドアのほうへと足を進める。


「最後まで、本当にぎりぎりまで涼子の役と台詞、残しておくから」


部長の言葉に振り向きもせず、私は演劇部の部室を立ち去った。



今思えば中学二年生のとき、三年生の先輩ではなく私が主役を演じることになったあのときから、こうなってしまったのかもしれない。

先輩たちの視線を思い出すと、今でも心が痛み、ひどいときは吐き気までしてしまう。

それから一年後に私は逃げるようにして、進学先を一人だけ市外の高校にした。



進学後はクラスで特に誰かと必要以上に話すこともなく、淡々とした毎日を送っていた。

ただ、演劇だけはどうしても捨てきれなく、懲りもせずに演劇部に入部し、それなりに女子部員とは話もしている。

けれど、自分に少しでも大きい役が回ってくるとき、私は身を引くことにした。
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