契約妻ですが、とろとろに愛されてます

パーティー

金曜日、就業時間が終わると更衣室に飛び込み、焦りながら私服に着替えた。


パーティーは七時からと言っていた。今は六時を回ろうとしていた。今日中に終わらせないといけない入力作業が終わらずに遅くなってしまったのだ。


地下鉄を降りて足早に琉聖さんのマンションへ急ぐ。


私の目に琉聖さんの近代的で洒落た外観のマンションが見えてきた。このマンションはいつ来ても自分と世界が違い過ぎて気後れしてしまう。豪華なエントランス、丁寧な警備員。常時、ロビーにはまるで執事のような雰囲気を思わせる男性がいる。


私はふたりに会釈をすると、エレベーターへ向かった。



玄関に入ると、自動で電気がパッと点く。何でも至れり尽くせりの最新の設備。部屋の中はシーンと静まり返り、琉聖さんはまだ戻っていないみたい。遅くなってしまったので、ホッとした。


ホテルでパーティーかぁ……どんなドレスを着たらいいのか……。
そんなことを考えながら琉聖さんの寝室の隣にあるウォークインクローゼットに向かう。買ってもらったたくさんのドレスはそこにある。


ウォークインクローゼットは私と慎の部屋を合わせて同じくらいの広さで大きい。ショップみたいに壁一面に服がかけられ、部屋の中央に小物の棚がある。壁の一画に私のドレスや服をかけられている。


早く決めないと……。


私はハンガーに掛けられたドレスを選び始めた。


パーティーだから、やっぱりロングドレス?どうしよう……選べない……。


それでも早く決めてしまおうと、ドレスを選んだ。選んだドレスは爽やかなペパーミントグリーン色の華奢な肩紐がアクセントのドレスだった。丈がくるぶしまであり、今回のパーティーに合うか自信はないけれど、これが一番自分に似合いそうだった。


「その選択もいいが……箱を見ていないのか?」


「きゃっ!」


突然、琉聖さんの声がして驚いてドレスを床に落としてしまった。


「びっくりした……」


急いで腰を屈めて床に落ちたドレスを拾う。


「すまない 言っていなかったな この箱に入っている 夕方届けさせたんだ」


琉聖さんは時計やネクタイの小物が収納されているガラス棚の上の大きな箱を示す。見ると白い箱で下の方に小さく有名ブランドのロゴ。


琉聖さんは私が手にしていたドレスを取り上げると、箱を開けて中の薄紙を外した。


「君のだ」


「私の……?」


薄紙の下にあるドレスに、私は目を見張った。


< 60 / 307 >

この作品をシェア

pagetop