書くの神
それは姿形を変えて


熱い緑茶と、お土産で貰った饅頭。

テーブルの上に並べる。私が食べるのではない。いうなれば、お供えみたいなもの。

私は仕事に出かけた。

目まぐるしいほどに忙しい仕事だが、厄介なことに、ふとアイデアが浮かんでくる時がある。

まさか仕事中に携帯を開いたりはしないが、紙切れの端に、ワードを書き溜める。

そこは節度を持った社会人だ。

書きたい時に書けるわけじゃない。

生きるため何かを抱え、抱えきれないものをそれでも抱えて、生きていかなければならない。

仕事が終わるまで、書くモチベーションを保っていたが、今宵は送別会。

生きていれば別れがある。

お酒が入ると、私は書くことも、頭で蠢いていたアイデアも忘れてしまった。

「ただいま」

誰も居ない部屋に帰る。

お茶と饅頭が迎えてくれた。

結局、自分で食べるんだわ、と自嘲気味に笑い、パクりといく。ちょうど甘いものが欲しかった。

冷めたお茶で流し込み、寝支度もそこそこに布団に潜り込んだ。




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