甘い恋の始め方
「素早いのねっ。ナンパに慣れているんじゃないの?」

「あ! ひどいな~ これくらい普通ですよ」

傷ついたように胸に手をやるおちゃめな一面を見せてくれる。

若いからだろうか……グイグイと理子の胸にノックしてくる。

「喉、乾きませんか? ちょっとカフェに入りましょうよ」

浩太は理子の肘に手を添えると、見つけた小さなカフェに向かう。

「理子さん、今もバナナジュースが好きなんですか?」

ふたり用の小さなテーブルに案内されてイスに座ると浩太が口を開いた。

「どうしてそんなことを知ってるの?」

小さい頃からバナナが好きで、バナナジュースは大好物だった。

翔とデートするとき、バナナジュースが置いてあれば優先して飲むほどだった。

「翔さんは理子さんを自慢してましたから。たしかそのときに聞いたんだと思います」

「それにしても覚えているなんで、やっぱり若いんだね」

若い脳は記憶力が良い。うんうん、頷いていると――

「違いますよ。あの頃、理子さんのことなら何でも知りたかったんです。翔さんが浮気していると知ったとき、内心別れればいいと思いました。でもそう思っても俺も彼女いたし、すぐに別れられなくて」

(そんなことを思われていたなんて驚きだった)

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