甘い恋の始め方
「浩太君……」

そこへ肩からかけていたバッグが振動した。

バッグから取り出してみると、着信は妹の愛美だった。

着信を無視しても良かったが、浩太の言葉に戸惑っている理子はちょっとこの雰囲気を変えたかった。

理子は浩太に断って電話に出た。

「もしもし?」

『お姉ちゃん、昨日の婚活パーティーどうだった? いい人いた?』

電話をかけてくるのはそんなことだろうと思っていた。理子は少し浩太から離れる。

「ううん。ダメだった」

『えー? そうなのぉ?』

「お母さんには言ってないわよね? いろいろとうるさいから」

お母さんが婚活パーティーに出たことを知れば、結婚を期待されてしまう。そう考えて、愛美に念を押す。

『もちろん言ってないわよ。変なプレッシャーは29歳の女にとってきついもんね』

「もう切るわよ。じゃあね」

愛美の返事を待たずに電話を切って振り返ると、浩太がやって来た。

そしてスマホをパッと取り上げられる。

「ちょ――」

浩太は理子のスマホを操作している。それから「はい」と返される。

浩太は自分のスマホをジーンズのポケットから取り出す。

「はい。交換終わり~」

浩太はほんの少しの時間で、理子のスマホから自分のスマホへ電話をかけ番号を登録していた。

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