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翌日の通勤途中、悠也はもう上海へ向かっただろうかと理子は電車に揺られながら思う。

出張でいないとなれば悠也と会社で鉢合わせすることがなく、何となく気が楽な理子だ。

(嘘はいけないよね……)

7階フロアに足を踏み入れたとき、時間を確認しようと手に持っていたスマホが明るくなった。

着信は浩太だった。

「あ……」

浩太の約束をすっかり忘れていたことに気づく。

「もしもし?」

『理子さん! 今日の約束忘れていないですよね?』

「え、ええ……」

『なんか気乗りしない返事だな~ あ~ショック~』

「浩太君……」

『だめなんて言わないですよね? 楽しみにしていたんですから』

「ん……19時に仕事終わる予定だけど、どこで食事する?」

『理子さんの部屋』

「え……」

『冗談ですよ。あまり積極的になると、理子さんに嫌われそうだから、大人しくします。渋谷あたりでいいですか?』

「うん。じゃあハチ公前で」

『ハチ公前か~ なんか新鮮だな。じゃあ、必ず来てくださいね』

電話が切れて、バッグにしまうとWEBデザイン2課の部屋へ向かう。