甘い恋の始め方
『悠也……今日病院へ行ってきたのよ』

「具合が悪いのか!? 言ってくれれば――」

『いいえ。体調はいいわ。だけど……悠也、心して聞いて』

「良くない話ですか? それならこれから行きますよ」

夕方から出張で大阪に行くが、寄ってから行っても新幹線の時間に間に合うだろうと、頭の中で計算する。

『いいえ、面と向かって話すのは辛いから。先生から余命6ヶ月の宣告を受けてしまったの』

「なんだって!? そんなに酷くなっているとは……」

『だから……素敵な人を見つけたら結婚してほしいの。私がデザインしたドレスを着た花嫁さんが見たいわ』

「康子さん……」

悠也は避けられない現実を思い出し、やりきれずソファの背に身体を投げ出す。

康子を安心させて逝かせてやりたい。

母親のように育ててくれた康子の願いは是が非でも叶えてやりたい。

(上海の出張がなければな……)

半月の海外出張がなければ、理子とデートを重ねて彼女を知ることが出来たのに。

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