ツンデレくんをくれ!
眼鏡と優しげな指と可愛い笑顔と
中出に無理やりキスをしてから、一週間は中出の顔がまともに見れなかった。


しかも、こういうときに限って、部活のみならず授業の合間にまで会ってしまうことが度々あった。


中出の姿を見た瞬間、あたしは中出から目を逸らして回れ右をしてその場から立ち去ってしまう。


部活じゃ逃げるわけにもいかないから、叫びたくなる気持ちを必死に押し殺して黙々とボールを打つことに専念するしかない。


それでも、中出が近くにいるときはどうしても意識してしまって、打ったボールがあっちこっちに飛ぶ事態になった。


なんでキスなんかしてしまったんだ。


よりによって、テニス部男子でイケメンワースト5に入る中出に。
(あたしと志満ちゃんの完全なる独断と偏見である)


いざ中出の姿が目に入ると、一瞬で唇に目がいってしまうのが困る。


あの、あの唇にあたしはっ…………。


視界に入る度にそのときの様子がぱっと頭に浮かんで、顔から火が出そうな勢いだ。


うあああああ。すっげー恥ずかしい。


一人でいるときは余計に思い出された。


特に、家に一人でいるときは。


中出の鼻から下を頭の中から打ち消すために、あたしは他の何かに熱中していなくてはならなくなった。


ただ、読書は逆効果だった。何せ、中出の家で読んでいたことを思い出してしまうから。それから連想して一瞬にして中出とのキスを頭に思い浮かべてしまうから。


くっそう、なんであの時読書なんかしちゃったんだ!


一番好きな読書ができないのは相当なストレスなのに!


自分で自分の首を絞めるとか、なんて間抜けなんだ!




< 64 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop