やくたたずの恋
2.おっさん、あらわる。(後編)
 怒りモード、オン。
 恭平の体から、そんな声が聞こえたような気がした。……と言うか、本当に聞こえたのだ。その証拠に、恭平の全身が青く熱い炎を纏い始める。
「はぁ? 結婚? ……お嬢さん、何の冗談だ?」
「冗談じゃないんです! 本気です!」
 悔しいからか、腹が立つからなのか。理由の分からない涙が、雛子の目に滲んでいた。非情なおっさんと巨乳女が、涙の海の中でぼやけて見える。
「私は、あなたのお父様である影山社長から、お願いされたんです! 恭平さんを影山の家に連れ戻して、私と結婚をするように説得してほしい、って!」
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