私は異世界の魔法使い?!
・日記
◆
カシャ、というシャッター音に似た音を立て、玄関の扉が開かれた。
そこから現れたのは、もちろんriria。
彼女はブロンドヘアーを掻き上げ、鼻歌混じりにどんどん部屋の中へと入ってくる。
「ねぇ、miaって嫌いなもの無…………って、どうしたの!」
慌てて駆け寄るriria。
その様子に我に返った私は、服の袖で涙を拭った。
「う、ううん! なんでもないからっ」
「なんでもないって言ったって……」
「馬鹿みたいでしょ? ちょっと記憶が曖昧すぎて、日記読んでて泣いちゃった。自分の事なのにほんと馬鹿みたい」
私はあくまでmiaを演じる。
怪我のせいで記憶が曖昧なmia……そうすればこの世界の事を知らなくても、多少おかしなところがあっても言い訳になる。
そう、それを前の世界で学んだ。
そんな事は露知らず、ririaは私のそばにやって来て、ベッドの端に腰掛けた。
「馬鹿だなんて思わないわ。誰だって愛する人を失えば悲しいもの」
「……うっ」
涙は再びこぼれ落ちる。
これはmiaの日記を読んだせいなのか。
それともmiaの日記に書かれているkaitoとカイトを重ねて見ている、私自身の涙なのか。