ラララ吉祥寺
芽衣さんの恋


龍古堂の軽トラは、珍しい4人乗りだ。


木島さんは、朝早く西荻窪のお店の近くの駐車場まで行き、車を取って来てくれた。

「荷台は狭いんですけど、人も乗せますからね。さすがに二人乗りじゃ、使い勝手が悪いでしょ。

じゃバンにしろ、って言われましたがこれも味気なくて。

なにしろこの軽トラ、可愛いでしょ」

彼が軽トラに可愛さを求める訳が、わたしには分らなかったけれど、確かに見た目はとても可愛らしい。

「乗り心地はいまいちですけどね、さぁ、どうぞ」

助手席に促されて乗り込んだ。

<ブロロロ……>

軽快なエンジン音を響かせて車が滑り出した。

道路が目の前で、景色がどんどん変わっていく。

軽トラは普通車のようにボンネットが無いので、外の空間との距離が近いのだ。

車は五日市街道を三鷹方面へとグングン進み、途中千川上水に沿って左折し武蔵境通りへ。

中央線線路を越えると、武蔵野日赤はもうすぐそこだった。
< 101 / 355 >

この作品をシェア

pagetop