かえるのおじさま
祭り日
雨は過ぎた。

美也子を抱えて居留地へと帰りついたギャロは、乾いた薪を探して手早く湯浴みの用意を整えた。

大きなたらいに温かい湯が満ちる。
簡易な目隠しの幕が張られ、美也子は温かい湯に腰を沈めた。

「風邪でも引いたら大変だ。ゆっくり温まれ」

天幕の外からギャロの声。

そして、湯に浸したタオルで拭った胸元には、大きな唇で彼が吸った、いくつかの標……それは夫婦になった証。

彼を夫として受け入れた行為の名残だ。

指先でそっとなぞって、美也子は静かに微笑んだ。
これで、彼の全てを手に入れたのだと……

そんな美也子の喜びには気づかず、天幕の外で見張りのために座りこんだ『夫』は、頭を抱えていた。

(やっちまった……)

雨が降っていたから、しばらくご無沙汰だったから、人肌の恋しい夜だったから……言い訳などいくらでも思いつくのに、そのどれも伝える気にならないのはなぜだろう。

(やっぱり、惚れている)

今まで、自分は我慢強い男だと思っていた。
欲しいものを我慢するすべを知っている大人なのだと。
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