LOZELO
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3.旅立って知った世界で
受け取ってしまった紹介状とやらを部屋の机に置いて、考える。
担任にその旨を告げたのは、帰りのホームルームが終わった後。
どのくらい入院するかはわかりません。
私の言葉に、最近顔色が良くなかったもんね、と哀れむような顔をした担任は、きっと私がいなくなることを喜んでいるんじゃないかと思った。
病院に行ってきた日、家族会議が開かれた。強制的にリビングに引きとめられて、お父さんからはいろいろ尋問。
特に、改まって言うべきことはなかった。
学校を辞めたいと言ったら、それだけはかなりの勢いで静止させられたけれど。
だから、担任には何も言わなかった。言えなかった。
明日、旅立つ。
出発は朝だけど、澪の学校の準備もあるだろうから、私は一人で行くと譲らなかった。
私は、澪と違って一人でできることも多いから。
本当は一緒に来てほしいと、微塵も思わない自分が怖いくらい。
荷造りは終わった。
中学のときの修学旅行で使って以来のキャリーバック。
旅行にでも行く気分。にはならない。
かさばっているのはタオルと、部屋着。
着るものくらい、病人っぽくはなりたくないなと、真っ先に思ったから。
3着くらい、つめこんだ。
あとは生活用品。近所のスーパーから学校帰り、洗濯洗剤やらなにやら、そろえて買ってきた。
一つにまとまった荷物を見ると、私の小ささを実感する。
これだけあれば生活できるんだなぁ、って。
あとは、紹介状をつめたら完璧。なんだけど。
滅多に鳴らないケータイを握りしめて、私は悩んでいた。
普通に朝会って、休み時間の度に私の席に来て、昼休みは当然のように一緒にご飯を食べて、帰り際も、部活に行く前に顔を合わせた莉乃に何も言えなかったから。
言うチャンスなんて、余るほどあったのに。
莉乃を信じていなかったから、言えなかった。
私は多分、復学したら孤立するだろう。
莉乃の気持ちがわからない。
あんな教師の言葉を信じて、真に受けて影響されて、今日だっていつもよりそっけなかったと思う。
私のことどう思ってる?なんて聞けない。
本当は面倒くさい、と言われるのが怖いから。
私と付き合う利点なんて、これっぽっちもないのだ。
明日から莉乃は、清々した青春を送る。
そして私は、また友達を失うのだ。
迷った挙句、メールは送らないことにした。
たとえこれが逃げだとしてもいいと思う自分が大きすぎて、考えることもしたくなかった。