ジキルとハイドな彼
名残惜しい彼
「で?結局イケメン刑事さんとは中途半端で終わった訳?」

友里恵がカツ丼のヒレカツをお上品にちびりと齧る。

「途中で仕事の呼出しがかかっちゃってね。いいところでお預けですよ。本当タイミングを見計らったかのように電話がかかってくるんだもん」

私は小さく溜息をつき同じくカツ丼をお箸でつつく。

「空気呼んで欲しいわよね」友里恵は眉を顰める。

小鳥遊がエッヘン、と咳払いする。

「あのー、そうゆう話は電話を掛けた部下の前では控えてもらえませんかね?」

渋い表情で異議申し立ててきた。

「何よーガールズトークに入って来ないでくれる?」

私は眉を顰めて小鳥遊に非難の視線を向ける。

「そもそもガールズって歳すか?」

「何ですって?!」

小鳥遊の配慮を欠いたツッコミに私と友里恵は鋭い視線を向けた。


緑ヶ丘警察署刑事課聴取室

本日私と友里恵は先日の拉致未遂及び発砲事件で事情聴取に来ている。

午前中から出頭し、お昼時になったので小鳥遊が用意してくれたカツ丼を聴取室の一室で食べている。

今回は親子丼と間違わなかったようだ。

「しかし証人保護プログラム、なんつって自宅に連れ込み自らが手を出そうとするとは不謹慎ですよねぇ、葛城さんも」

職権乱用甚だしい、と言って小鳥遊は眉根を寄せバクりとカツ丼を頬張る。

ちゃっかり自分の分も用意していたようだ。

「何いっちゃってんのよ。あんたと違ってコウにそんな下心なんてあるわけないじゃない。今回はたまたま流れ的なものでそうなっちゃっただけであって…」

私がモゴモゴ反論すると、小鳥遊はッハと鼻で笑やがった。
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