密会は婚約指輪を外したあとで
涙と嘘

今日の天気予報は一日中雨マークだった。

近くのスーパーで買い物をした帰り道。

自分のアパートの前に誰かが立っているのが見え、不審に思った私はつい立ち止まる。

傘で自分の顔を隠しつつ様子を窺えば、その不審者はまだ未成年のようで、濃紺の学生服を着ていた。

うつむき加減の少年は傘も差さずに雨に打たれ、アパートに背を向けた状態で立ち尽くしている。

あの細身の立ち姿は、もしかして。


「ハル、くん?」


そばに寄った私の呼び掛けに、ゆっくりと顔を上げる。


「なゆさん……」


掠れた声と虚ろな目つきは、噴水で遊んでいたときとは別人のものだった。

あの無邪気さは一切なく、どこか暗く大人びた雰囲気を漂わせている。

髪や額から滴る雨雫が、彼の涙にさえ思えた。
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