イジワル上司に甘く捕獲されました
ご近所の人
真央の海外研修プログラム合格のニュースに両親も大喜びで。

私達はひとしきり喜んで。

佐知子叔母さんにもバッチリ報告して。

我が家は暫く、お祝いムードに包まれていた。

でも。

その一方で、二人とも私を札幌に送り出すことに不安を募らせていた。

「美羽、本当に大丈夫なの?
せめて引っ越しの日は手伝いに、ママ、行くわよ?」

「そうだな……。
暫くママに一緒にいてもらったらどうだ?」

私の顔を見る度に、何度も同じ内容の話を繰り返す両親に。

「もう、大丈夫だってば。
私、もう二十六歳なんだよ。
真央の一人暮らしの時はそんなに心配しなかったでしょ?」

申し訳ないけれど半ばうんざりしながら返事する、ということをここ数日繰り返している。

そんななかで、あれよあれよといううちに、私の引っ越し日前日。

支店では私の送別会を盛大に催してくれていた。

「もぅ、まだ私信じられないですよ~美羽さんがいなくなっちゃうなんて!」

ほんのり頬を赤く染めて私に抱きついてきた後輩の佳歩ちゃん。

「寂しいです~」

と離れようとしない佳歩ちゃんに、私より三年先輩の城田さんが呆れ顔で言う。

「もう、何やってんの。
橘さんに迷惑でしょうが。
離れなさいよ、全く!」

「えぇーっ、城田さん、寂しくないんですかぁ?」

「寂しい、寂しくないじゃないでしょ。
橘さんの新しい門出なんだからもっと快く送り出してあげなさい」

私をここまで育て上げてくれた、かつての指導担当の城田さんは手際よく佳歩ちゃんを私から離す。

「ほらっ、橘さんの飲み物、注文してきてあげなさい」

「……はぁい」

クスンと鼻をならしながら佳歩ちゃんは店員さんの方へ。

「……全くもう」

やれやれ、と溜め息を吐きながら城田さんは私に向き直った。


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