卓上彼氏
第三画面

ふたりの涙




「ただいまぁ♪」






私はいつも通り帰宅した。いや、この日はいつもよりご機嫌に帰った。






手洗いとうがいを軽く済ませ、制服を脱いで部屋着に着替えた。







「おかえり!」






私の着替えは見られていたのだろうか、タイミングを見計らったようにヨクがパソコン上に現れた。






「…見てた?」






「さーね♪」





よ、読めない。






ヨクは弁解するわけでも肯定するわけでもなく、私をからかうように笑った。






「今日はみかみ良いことあった?すごく嬉しそうだけど」





ルンルンでベッドに寝ころがって雑誌を読む私にヨクは言った。







「へへーん♪今日はねぇ、誕生日ケーキ予約してきたのっ!」






「誰の?」






「私のに決まってるでしょ♪」






私はなおもファッション雑誌に目を向けたまま答えた。








「えっ?!自分のケーキ自分で予約したのか?!」





「悪いぃ?お父さんはギリギリに帰ってきて忙しいだろうから私が予約したまでなの!」






私は雑誌から目を離してヨクを睨む。






「そうじゃなくて、俺に言ってくれたら予約しといたのに」





ヨクは残念そうにしょんぼりした。






「だって『私の誕生日ケーキ予約して!』なんて図々しいこと言えると思う??さすがに私そこまで嬢王様気質じゃないよ」






「それはわかるけど……少しは彼氏頼っていいんだよ?」





ヨクはむしろ頼ってくれ!というような顔をした。






「うん、わかったよ。次なんかあったらヨクにお願いする」






その時私は、のちに本当にお願いするときが来るなんて思わずに答えたのだった。



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